猫では、飼育猫の40%未満(多頭飼育施設では90%以上になることも)が猫コロナウイルス(猫腸内コロナウイルス、FCoV)に感染していると報告されています。
それに感染した猫が糞便中にウイルスを排出し、そのウイルスを口や鼻から取り込んでしまうことで感染します。
さらに、何らかの原因によりウイルスが突然変異し強毒化した猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)になることで発症します。
・多頭飼育
・若齢 60%前後が2歳未満
・ストレス 56.7%で関与が疑われ、手術・病気・旅行・ワクチンなど
・免疫抑制剤の使用
などがあげれます。
大きくはドライタイプ、ウッェトタイプの2つに分けられます。
ドライタイプでは肉芽腫というしこりが体にできます。
ウッェトタイプでは腹水や胸水が貯留します。
他に発熱や食欲・元気低下、黄疸、痙攣・運動失調・情緒不安、下痢・便秘・嘔吐、瞳孔不整・ぶどう膜炎・失明、紅斑・潰瘍・表皮剥離など多岐にわたります。適切な治療がされなければ高い致死率が予想されます。
発熱を含む身体所見、血液・画像所見をふまえて検査をすすめていき、腹水や胸水、肉芽腫にコロナウイルスがいるかを確認することで診断していきます。血液検査ではSAAの上昇、低アルブミン、高グロブリン、高ビリルビンなどみられます。
治療は抗ウイルス薬が主体で、症状に合わせてステロイドや非ステロイド、インターフェロン、イトラコナゾール、免疫抑制剤、対症療法をしていきます。
当院では抗ウイルス薬であるMUTIANの類似薬のGS-441524を取り入れています。人のコロナウイルス感染時の治療薬であるレムデシビル・モルヌピラビルなどを使用することもありますが、情報量の観点からもGS-441524の方が治療成績がいいと考えられ、当院でも高い治療成績をえています。
蔓延している猫コロナウイルスに感染させないことが重要です。一度、感染してしまうと最大2年以上にわたって猫コロナウイルスを糞便中に排泄してしまいます。当院では便や血液で感染の有無を確認することが出来ます。また、感染が疑われる場合はアルコールや界面活性剤での消毒を徹底します。現在、日本国内で使用可能なワクチンはありません。